階下の人々7:ハウスキーパー(家政婦)

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男性使用人の次は、いよいよ女性使用人の紹介です。まずはハウスキーパー(Housekeeper)。家政婦と訳されることが多いようです。家政婦と聞くとつい「家政婦は見た!」みたいな掃除のおばちゃんをイメージしちゃったりしませんか? 少なくともボクはそんな印象です。でもヴィクトリア朝時代のハウスキーパー(家政婦)は、そのイメージとは全然違います。何しろ女性使用人のトップ。バトラー(執事)に並ぶ、最上位の上級使用人でした。んー、家政婦以外のいい訳ってないのかなー。たまに女中頭っていう訳も見掛けたりはしますね。


男性使用人達がバトラー(執事)の管理下なら、メイド達の大半はハウスキーパーの管理下に置かれました。一部の例外はコック(料理人)やレディースメイド(侍女)ぐらいです。メイド達の雇用や人事、そしてマネジメントがハウスキーパーの主な仕事でした。奥様の補佐として、家計の収入や支出も管理しました。
マネジメント業務以外では、備品や食料品の管理もハウスキーパーの仕事です。バトラーの担当が銀食器なら、ハウスキーパーは陶磁器やリネンを管理しました。また、紅茶の時間に必須となる飲み物とお菓子はキッチンではなく、ハウスキーパーが管理する蒸留室で用意されました。ケーキやビスケット、ジャムといった軽食を作っていたようです。また、ハーブの蒸留といった民間療法のスキルも求められました。


とっても偉いハウスキーパー(家政婦)ですが、その地位の高さを示すエピソードが幾つかあります。まずハウスキーパーは、既婚、未婚を問わず、敬意を込めてミセスと呼ばれました。また、使用人の証である「メイド服」を着る必要もありませんでした。
そしてハウスキーパーのシンボル的な小アイテムが、鍵束です。その仕事柄、貯蔵庫やあらゆる部屋の鍵を持ち歩く必要があったのです。ジャラジャラと鍵束の音が鳴るのはハウスキーパーが近くまでやってきた合図で、その音を聞くだけで下級使用人は思わず「ビクッ」としてしまったそうです。その気持ち、ボクにもとてもよく分かります(笑)。


また、ハウスキーパー(家政婦)には私室が与えられました。メイドの面接なども、ハウスキーパーの事務室で行われたようです。下級使用人としては、きっと呼び出されたくない部屋ナンバーワンだったのではないでしょうか。
さらにハウスキーパーには、専属のサポートメイドまで付くことがありました。スティルルームメイド(蒸留室女中)です。使用人に仕える使用人。何だか本末転倒な気がしないでもありませんが、将来のハウスキーパー候補生といった位置付けでもあったのでしょう。マイナーなメイドなので、スティルルームメイドまでは「メイドくん」には出てきません。

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このページは、nadegakiが2010年3月21日 23:14に書いたブログ記事です。

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