階下の人々10:ハウスメイド(家女中)

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皆さんはメイドさんと聞いてどんなイメージを抱くでしょうか? え? ええっ? えっちなのはいけないと思います!>< ・・・そんな夜のご奉仕的な妄想系メイドさんは別として、普通はお掃除とか片付けとかしてくれる姿を思い浮かべる方が大多数かと思います。
そんなメイドの中のメイド、まさにメイドと言えばこのイメージ!というメイドさんが、ハウスメイド(House Maid)です。強引に直訳してしまうと家女中ですが、普通に日本語でメイドって言えばこのメイドさんが該当するんじゃないでしょうか。


お仕事の内容は、家事全般。掃除機のない時代ですから、掃除にかなりの時間を割いていたようです。もちろん掃除以外にも、ベッドメイクや日用品の補充、お風呂や暖炉に灯りの用意まで幅広い仕事を担当していました。基本的に台所女中(キッチンメイド)や洗濯女中(ランドリーメイド)といった専門職メイドさんの担当区分以外は、全て家女中(ハウスメイド)の仕事と言って差し支えないでしょう。
ちなみに多くのメイドを雇えない小さい屋敷では、専門職メイドさん達の仕事を肩代わりして何でも対応しなければなりませんでした。「メイドくん」作中には出てきませんが、そんな全ての職種を兼ね備えなければならないメイドさんを雑役女中(メイド・オブ・オールワークス)と呼びます。


せっかくなので今回は、家女中(ハウスメイド)の一日を紹介します。


まずは朝、起床は6時ぐらいです。暖炉に火を入れるところから一日の仕事は始まります。基本的にハウスメイドは、御主人様の家族や客人に姿を見せず「妖精のように」仕事をすることが求められました。そのため主人達が起きてくる前に、ひと通りの掃除を済ませておく必要がありました。午前中に使われる予定の朝食室や応接間、玄関ホールなどの掃除を行い、カーテンを開けて朝の新鮮な空気を取り込みます。
奥様を起こすのは、ハウスキーパー(家政婦)の仕事です。しかしそのハウスキーパーを起こすのは、ハウスメイドの仕事でした。下位使用人であるハウスキーパーは、上位使用人達の世話も仕事のうちだったのです。


使用人の朝食は朝8時ぐらいに、仕事の合間を見計らって手早く済ませます。ようやく主人達が起きてきて朝食室へ行くのは、朝9時から10時ぐらいの間。すかさずハウスキーパー達は寝室へ突入。ここでも階上の人々の目を避けつつ仕事をします。掃除、ベッドメイク、小物の用意、全て部屋の主が居ないうちに済ませました。あと、トイレの片付けも大事な仕事でした。
どうでもいい話ですが、「メイドくん」の作中は史実のようなおまるではなく、ちゃんと個室のトイレがある設定です。そこはファンタジーで! 史実の中世おトイレ事情は、調べてみると面白いかもしれませんよ?


午前中はとにかく掃除です。メイド服も午前中は掃除用デザインで、午後用の制服とは違うものを着ていました。日常的な掃除の他、ローテーションで大掛かりな掃除や補修も行っていました。月曜日は玄関ホール、火曜日は応接間、といったカンジです。
掃除といっても単にゴミやホコリを掃くだけではなく、磨き掃除も含まれていました。木材、石材、金属と、磨くものによって掃除道具も異なります。想像しただけで腰が痛くなってしまいそうな重労働でした。特に冬の暖炉磨きが辛かったみたいです。


お昼の12時に、使用人のディナーとなります。当時の労働者階級は、昼食がディナーでした。ちなみに主人達の昼食は13時頃。昼食の後は洗濯物の回収とか掃除の続きとかをして、15時過ぎにはひと通りの仕事が落ち着きました。ようやくお茶の時間となり、ひと息入れることが出来ました。
お茶の後に重い仕事はありませんでした。主人達の行動を予測して使われるであろう部屋へ先回りして、軽い掃除や整頓、暖炉や灯りを用意するなどして快適な住環境を維持するぐらいです。そして主人達が部屋から出て行けば、やはり速やかに片付けをしました。


他には主人の家族や客人達の呼び出しに応じて、あらゆる雑用を行いました。その中には、腰湯の用意なども含まれます。史実のヴィクトリア朝時代にはお風呂はまだ一般的ではなかったので、タライに湯を張ってお風呂代わりにしていました。そのお湯はもちろん、ハウスメイド達が運ばなければならなかったのです。「メイドくん」作中ではフィクションらしく、普通に浴室が出てきますけどね。
夜8時ぐらいに主人達の夕食があるので、その準備と片付けをして、さらに寝室の用意をすれば一日の仕事はお終いです。夜9時に自分達の夕食を摂り、その後は自由時間でした。22時過ぎには戸締まりと消灯をして、就寝していたようです。


これがメイドさん達の標準的な一日です。いかがだったでしょうか? 夕食会や舞踏会などがあって、多くの客人が訪問している時などはもっと多忙でした。さらに今回紹介したのは大きな屋敷で働くメイド達のパターン。彼女らは大人数で役割分担していたので一人当たりの仕事量が少なく、比較的恵まれていました。
逆に一人で全ての仕事をしなければならない小さな屋敷のメイド・オブ・オールワークス(雑役女中)は、ここで紹介したスケジュールよりはるかにハードな日々を過ごしていました。実はメイドさんの大半は、後者だったと言われています。「メイドくん」に出てくるメイドさん達は、かなりラッキーな部類だったりするのです。

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このページは、nadegakiが2010年5月28日 01:04に書いたブログ記事です。

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