階下の人々3:コーチマン(御者)

ヴィクトリア朝時代、交通手段の中心は馬車でした。当時の英国は階級社会でしたが、メイドを雇うことが出来れば中流階級と言っても良いレベルでした。もう少し家計に余裕のある家であれば、メイドを複数人雇ったり、男性使用人を雇っていました。
そんな彼らの憧れの的。上流階級のステータスシンボル。それが自前の馬車です。自らの馬車を所有することは、中流階級の人達にとって高嶺の花でした。馬車そのものがお高い上に、厩舎や専門職の使用人を抱えることは、かなりハードルの高いことだったのです。今風に表現するなら、お抱え運転手付きの高級リムジンみたいなイメージでしょうか。


そして運転手役となる、馬車を走らせるための専門スタッフがコーチマン(Coachman)です。日本語では御者ですね。技術を要する職種なので、下級使用人の中では比較的待遇も良かったようです。馬車の運転席である御者台は、外からでも良く見えます。そのため走る広告塔の役割も期待されることから、派手で立派な制服を支給されることが多かったようです。
仕事の内容はもちろん、馬を操り馬車を走らせること。主人達がいつでも出掛けられるように、常時馬車の用意を整えていました。そして出掛けた先では、主人達の用事が終わるまで待機するか、もしくは指定の時間に迎えに上がりました。


それと馬の世話係として、グルーム(馬丁)という役職もありました。ヴィクトリア朝時代でも終盤になると、彼らは自動車の運転手や整備士に取って代わられていきました。


「メイドくん」の作中でもコーチマン達は存在はしているはずですが、本邸とは別の離れに住んでいるという設定なので出番ありません。いや、出番はあっても、立ち絵が用意されることはないと思います。仕方ないね。<ぉぃ


ちなみに自分で馬車を持てない人達がどうしていたのか。上流階級でも中の下といった人達は、貸し馬車を利用しました。貸し切りのリムジンサービスみたいなものです。中流階級の人達が利用したのが、辻馬車。シャーロック・ホームズとかでも頻繁に出てきますね。これは今でいうタクシーみたいなもので、行き先を指定するとそこまで連れて行ってくれました。
タクシーなんてとんでもない! とてもそんなお金ねーよ! そんな一般庶民の味方が、乗合馬車(オムニバス)です。22人乗りで、屋内席と屋上席の二階建てでした。バスのご先祖様ですね。


他には駅馬車や郵便馬車と呼ばれる、都市間長距離馬車も運行していました。乗合馬車には決まった停留所はありませんでしたが、駅馬車では宿屋やコーヒーハウスが駅代わりに機能していたそうです。ヴィクトリア朝は鉄道や地下鉄の登場した時代でもあるので、これらも時の流れと共に消えていきました。

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このページは、nadegakiが2010年3月 7日 02:46に書いたブログ記事です。

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