階下の人々5:ヴァレット(近侍)
ヴィクトリア朝時代のイベントに、社交シーズンというものがあります。春から夏にかけて議会のある時期には、ロンドンに地方の貴族達が集まって、日夜、舞踏会やパーティが開かれたのです。シーズン中に滞在するための、ロンドン近郊にある館をタウンハウスと呼びます。
そして秋から冬の間は、貴族は自分達が所有している領地へと戻ります。本邸とも言えるそちらの館を、カントリーハウスとか、マナーハウスと呼びます。広大な敷地と庭園に、大きなお屋敷というイメージは、カントリーハウスの方ですね。
「メイドくん」は、社交シーズン中の地方都市を舞台にしています。そのため領主夫妻は帝都に滞在中のため、社交界デビュー前の娘だけがカントリーハウスに残っているという設定です。ついでに領主夫妻のお供でタウンハウスに行ってしまった使用人達は、まとめて出番がありません。
そんな出番のないキャラの一人が、ヴァレット(Valet)です。近侍と訳されます。上級使用人に区分され、主人の個人秘書みたいな仕事をしていました。奥様に仕えるレディースメイド(侍女)の男バージョンみたいなものですね。
主人に仕えることが第一優先となるため、フットマン(従者)と違ってお屋敷の仕事はしなくても良かったようです。また採用基準は、主人との相性が第一となりました。そのためバトラー(執事)の人事権が及ばず、主人自らが選任しました。
ちなみに使用人の人数が少なく専任のヴァレット(近侍)を雇えない館の場合は、バトラー(執事)やフットマン(従者)がその役割を兼任しました。逆にヴァレットが居てくれる場合、フットマン達の仕事はずっと楽になりました。
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